日本製鉄 決算内容 まとめ
日本製鉄(5401.T)
📌 Q1 2026年3月期 決算概況(4~6月)
純損失:1,958億円の赤字(前年同期は1,575億円の黒字)に転落しました
アナリスト予想は約257億円の赤字だったため、大幅に予想を上回る赤字となりました
売上高は前年同期比約8.3%減の2兆8.7億円、事業利益は61.2%減の920億円に悪化。営業利益は1,395億円の赤字に転落
営業利益率は前年比の10.8% → −6.9%と大幅に悪化

📊 通期業績予想の下方修正
従来の2000億円の黒字予想から、400億円の赤字見通しに大幅修正されました(前期は3,502億円の純利益)
上期(4~9月)単独の純損益も1,700億円の赤字(前年同期は2,433億円の黒字)とし、通期赤字転落を織り込んでいます
🔍 主因:米国U.S. Steel買収に伴う大型特別損失
2025年6月に正式完了した**米国U.S. Steel買収(約149億ドル)**に伴い、AM/NS Calvert JVの持分譲渡で約2,315億円の特別損失を計上
この特損が主因でQ1大幅赤字、通期赤字転落の直接的な要因となっています。

🔄 買収の長期的意義と今後の戦略
買収は、今後3四半期(2025年7月〜2026年3月)でU.S. Steelの利益約800億円を連結する計画(今期:80億円/次期:150億円/2028年以降:年250億円規模)
今後は11億ドル規模の資本投資や高付加価値製品の展開により、2028年以降の収益貢献を見込みます
中期経営計画の戦略刷新は年内にアップデートされる予定。
💳 その他の注目点
株式分割:2025年10月1日付けで1→5株に分割されます
格付け:S&P社は今回の買収による財務負担を理由に格付けを**“BBB+” → “BBB”(ネガティブ見通し)**に引き下げました
配当方針:通期120円/株(分割考慮前)を維持、累積配当性向は約30%をキープ
🧠 総合分析と今後の焦点
短期的影響
買収関連の一過性損失により短期的には財務負担が顕在化。
売上・利益率ともに大幅に悪化し、信用力低下や投資家の懸念に直面。
中長期のポテンシャル
U.S. Steelとの統合で**グローバル生産能力を増強(粗鋼年産能力約8,600万トン)**し、世界シェアを拡大
高付加価値製品へのシフトと技術力移転で、中期的な利益向上の可能性あり。
今後発表される中期経営計画の内容と進捗が注目ポイント。
リスク・注意点
米国側の法規制や市場環境の不透明感
海外事業統合の実行リスク(文化融合、労働組合対応等)
世界の鋼材需給や中国の供給圧力に対抗できるかの構造対応
✅ 結論と展望
日本製鉄はQ1で約2,000億円の大赤字となり、通期予想も400億円の赤字に下方修正されました。これは主に米国U.S. Steel買収に伴う一時的な損失の影響です。一方で、買収により2026年度以降の業績貢献が期待され、長期的には高付加価値領域への転換や世界市場シェア拡大による成長余地も存在します。
今後は、「中期経営計画」の詳細と2025年度下期以降の実績推移の見通しに注目が集まります。
今後チェックすべきポイント
U.S. Steel統合後の中期戦略や利益進捗
世界鉄鋼市況、特に中国との競争および米国の政策動向
格付け動向、配当性向、株主還元姿勢の維持・強化